認知症部会では、今後の茅野市における認知症対策について以下のように検討した。部会は今後これらの実現に向けて活動を継続する。

 

.部会のスローガン

「認知症の方が一人の市民として人生を全うすることができるまち」づくり

 

.基本的視点と理解

1.地域における認知症対策に求められる8つの視点

1 認知症は、予防、MCI(軽度認知障害)と呼ばれる予備群の早期発見、MCIから認知症への進展防止、発症後の人間的ケアといった各段階での対応が必要で、その点で一人ひとりの経過を時間軸でみていく視点が求められる。

2 認知症の予防とMCIの早期発見、認知症への進展防止には、脳の機能だけに注目するのではなく、身体面の機能も視野に入れる必要があり、その意味で「脳とからだの健康」という視点が求められる。

3 また同時に「脳とからだ」にとどまらず、認知症のケアを考えるには地域や社会との交流、さらにはその方が主人公となるような社会参加まで含めた幅広い全人的(全人格を総合的にとらえる)な視点が求められる。

4 一人の認知症の方を支援する際には、その方を取り巻く家族や近隣、環境も含めて考える視点が求められる。

5 「脳とからだの健康」ということを考えた場合、それは知的機能の維持、生活習慣改善、フレイル(※注1)の予防という、誰にとっても我がことである課題が上がってくるのであり、その意味で全市民を巻き込むという視点が求められる。

6 したがって認知症の地域ケアを考えるということは、地域の保健・医療・福祉のあらゆる課題を考えるということであり、その点で福祉21茅野の他の分野と積極的に連携するという視点が求められる。

7 同時に、認知症ケアを考える際には広く一人ひとりのこの地域での社会生活が視野に入るため、これまでの「保健・医療・福祉の多職種連携」にとどまらない、暮らしや教育、産業の諸分野と手を結ぶ「多業種連携」の視点も求められる。

8 こうした活動は認知症に限らない、支え支えられるネットワークの構築に結びつくが、これらは意識的なコミュニティ・デザイン活動(※注2)であり、幅広い層の住民が主体となる活動に仕立てていくという視点が必要となる。

 

(※注1)フレイル

「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」(厚生労働省研究班報告書より抜粋)

(※注2)コミュニティ・デザイン

人と人とのつながり方やそのしくみをデザインすることで、楽しさと地域の課題解決とを結びつけること。ひととまちを活性化する一つの手法

 

 

2.「認知症」の基本的理解

1 認知症の方は、知的衰退をきたしている一方で、豊かな情緒的世界とこれまでの人生史において築いてきた広大なアイデンティティの世界を生きている。

2 しかしながら、認知症は認知機能の衰えと、認知の失敗からくる不安や葛藤といった苦悩を抱える病であり、その苦悩は周囲の否定的な反応によりさらに助長される。不可解な言動の多くはこれら苦悩が高じた結果の精神症状に由来している。

3 したがって、ケアのあり方としては、認知症の方の苦悩に寄り添い、その人格と個性を尊重し、その方の固有の物語を読み解きながら、認知する作業をサポートし、不安と焦燥を解消し、前向きな自信と勇気と社会性を取り戻していただくことにある。

 

.検討された対策、施策

1.心のバリアフリーのまちづくり

(1)官民産学共同行動:(仮称)D-Friendsの取組(Dは認知症を示す英語のDementiaの略)

・あらたな“やらざあ100人衆”

:行政、市民、民間福祉団体、認知症家族会、商工会、企業、郵便局、学校、消防、警察な

・認知症の理解を深め、認知症の方がバリアフリーで歩けるまちを目指す

・認知症入門講演会、出張講座、劇団による知識の普及

・認知症サポーター、キャラバン・メイトの育成、連絡会の立ち上げ

・それぞれでの取組の検討が進めば→「認知症くもの巣型サポートネット」への参加へ

 

(2)認知症サポーター、キャラバン・メイトの再組織化

・認知症に対する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症となった本人やその家族に対して、できる範囲で手助けをする「認知症サポーター」や認知症サポーター養成講座の講師役となる「キャラバン・メイト」の活動を推進していく仕組みの検討

 

(3)「認知症ケアガイドブック~理解と予防とケアのために~」を作成、全戸配布

 

(4)認知症の普及啓発のためのホームページの作成

 

2.認知症くもの巣型サポートネット

(1)くもの糸の大小の交点がサポート拠点となる

・保健福祉サービスセンター、地区コミュニティセンター、公民館、民生児童委員、社会福祉協議会、(仮称)まちの保健室、医療・介護などの事業所、NPO、ボランティア(個人、団体)、認知症家族会、認知症サポーター・キャラバン・メイト、商店・商店街、公共交通機関、官民産学共同行動の参加者・参加団体 など

 

(2)実施する事業内容は自由

・相談窓口((仮称)「認知症110番」)、サロン・カフェ・たまり場・しゃべり場、クラブ活動(趣味、スポーツ、園芸など)、回想法、認知症予防活動、外出や買い物の支援、運転免許証返納者への支援、徘徊見守り、安否確認、定期訪問活動 など

 

(3)「サポートネット取組ガイド」の作成

・認知症に係る様々な事業の概要やヒントを掲載

・「何かやりたいけど、どうしたらいいのか、何をしたらいいのか分からない」という市民、事業所、団体に向けたヒント集

 

3.認知症予防事業

(1)認知症予防講座

・2層、3層(※注3)での定期開催

・4層(※注3)以下への出前講座

・その他希望する事業所や団体等への出前講座

 

(2)「認知症ケアガイドブック~理解と予防とケアのために~」の作成、全戸配布(1-(3)の再掲)

 

(※注3) 2層、3層、4層

茅野市で採用する日常生活圏を階層化する考え方に基づいた呼称

2層:茅野市全域、3層:保健福祉サービス地域(4エリア)、4層:地区(10地区)。

詳細は、第3次福祉21ビーナスプラン21ページ参照

 

4.認知症早期発見事業

(1)「もの忘れテスト」モデル事業

・鳥取県琴浦町での取組(※注4)を参考にした事業

・一つのエリア、あるいは区をモデル地区にして、事業そのものが地域になじむかどうか検証も必要

 

(2)テストで該当となった方へのフォロー体制の構築

・認知症への進展防止のための仕組みづくりの検討

 

(※注4) 鳥取県琴浦町での取組

「認知症予防のできる町」を目指した取組。鳥取大学の協力のもと予防や早期発見のための様々な仕掛けを作り上げている。

 

5.認知症発症者対応および家族支援事業

(1)認知症診断パス

・認知症が疑われる方が医療機関で専門的な診断を受けるための手順を作成

・諏訪中央病院神経内科を中心に作成し、運用

 

(2)認知症初期集中支援チーム

・認知症の初期の段階で家族や関係者が適切に対応できるよう支援する複数の専門家によるチームを4つの保健福祉サービスセンターに設置

 

(3)医療・福祉・介護従事者向け学習会

・医療・福祉・介護の現場で認知症のケアに当たる専門職種向けの学習会の企画、実施

 

(4)認知症サポート医の育成(医師会、諏訪中央病院)

・かかりつけ医の認知症診断等に関する相談役・アドバイザーとなる、認知症に係る地域医療体制の中核的な役割を担う医師の養成

 

(5)認知症ケースカンファレンス

・関係者による認知症に係る事例検討会の実施

 

(6)「認知症の高齢者を抱える家族会」の活性化

・これまでの活動を振り返り、今後さらに活発に活動できるよう名称の変更も含め、あり方について検討

 

(7)家族への緊急支援策

・緊急時の相談窓口

・緊急ショートステイの仕組みづくり

 

(8)「認知症ケアガイドブック~理解と予防とケアのために~」の作成、全戸配布(1-(3)の再掲)

 

上記の1.2.の仕掛けは行政、福祉21茅野、認知症部会で検討していくが、実際に個々の事業に取り組むのは参加する地域の住民や団体。できれば取組の中で参加者らが自ら事務局を担うなど、自立した活動になればベストだと考える。ここへ市社協や市民活動センター「ゆいわーく茅野」がどう関わるとよいのかは今後検討が必要。

3.4.5.は、行政、福祉21茅野、認知症部会が主体で立ち上げ、PDCAサイクル(※注5)を回すイメージで取り組む。これらの事業は1.2.を活動の場とする、1.2.の活動に生かす、導入する、といった使われ方をしてもらうことも想定する。

このことにより、次の4点が進展することを目指す。

1 認知症の予防活動が意識的に行われる

2 認知症の早期発見が地域や家庭で取り組まれる

3 認知症と診断されても排除されることなく、家族を含めて見守り・支援を受けられる

4 さらには認知症の方が何らかの形で社会参加できるまちづくりがすすむ

 

(※注5) PDCAサイクル

Plan(計画)→Do(実行)→Check(点検・評価)→Act(改善・処置)という事業・活動の流れの頭文字を取ったもの。言いっぱなし、やりっぱなしにせず常にこれを繰り返すことが必要なことから「サイクル」と言われる。

 

.今後の部会の活動

認知症部会は今後10年、認知症の地域ケアのために活動を継続する。

Ⅲに掲げた項目について、すでにあるものについては必要に応じて拡充を図り、新たに必要と考えられるものについては立ち上げを行う。

そのためにさらにプランを綿密なものとし、実際の活動を幅広い層の方たちと連携して展開し、その成果を検証する作業を丁寧に繰り返していくこととする。